「キャリア形成論」で、最新の男女共同参画白書概要版の本編を学生と読み解く
「キャリア形成論」の講義で、最新の男女共同参画白書概要版の本編を読み解きながら、男女共同参画を取り巻く男性・女性の意識の変化を学生と議論しました。
令和5年6月の男女共同参画白書では、昭和モデルと令和モデル、という対比をしていますが、実際には男女ともに意識は徐々にグラデーションのように変化しているのが調査結果からわかります。女性にとって働きやすい方向に男女の意識が変化し、男性の育児や家事への参画も進み、ただ、ペースが十分な速さではないために、少子化は加速している(もちろんほかの要素もある)。
方向性は良い方向なのは間違いなく、社会の変化のペースの遅さを一人ひとりの家庭での話し合いなどで補って行けば、希望はある、そんなデータだよね、という話をしました。
ちなみに、グラフの専業主婦コースを望む人の割合が平成から令和にかけて男女間で大きく逆転し、今、男性と女性で意識のボタンの掛け違いが顕著ですが、この点については学生同士で議論してもらいました。
それにしても、生まれた年による人生の差の大きさに心が痛む。
白書概要版(R5)P3には、昭和41年生、51年生、61年生、平成13年生の人生と日本経済の主な出来事がプロットされている。親ガチャはよく言われるが、生まれた年によるガチャ/不公平も大きい。ちなみに私は昭和44年生なので、引く手数多のバブル最終列車で社会に出た。まさに滑り込みである。
井の中の蛙
AIが世の専門的な活字データ、紙媒体のデータを飲み込み終わるとき
AIがとんでもないスピードで世の中を変えていく。なにより注目はそのスピード感である。
たとえば、100万ユーザー獲得までに、
ネトフリ 3.5年
Twitter 2年
Facebook 10か月
Instagram 2.5か月
ChatGPT 5日(Statista調べ)。とんでもないスピードで普及しているだけでなく、その中身も劇的に変化している。
で、元書籍編集者としての私が考える次の焦点は、学術書、実務書、基本書などの活字媒体を誰がどう、AIに食わせるのか、ということ。
暇人がいわゆる書籍のPDF化の自炊方式でどんどん専門的な活字媒体をAIに食わせたとして、著作権やその対価がどうなるのかは興味深いが、それよりも大きな問題は、活字媒体を飲み込んだAIはあらゆる専門的な知見を総合した存在になるということ。
おそらく、専門の研究機関でそれに類したことをやっているのだろうけれど、(一定の質の)一通りの活字媒体をAIに食わせ終わったら、また、AIは次のステージに行く。
今、AIがアホな間違いをするのはアホなネット情報を片っ端から食っているから。
そうではなく、「これは正しい」と言える専門的な書籍と学術誌を食わせて、専門的な判断はそこからだけ行う、という設定にすれば、AIの判断はより洗練されたものになる。
また、日本で言うと、古文書(のうち確実に偽書でないもの)のデータをどんどん食わせると、過去の日本社会の実像がより明確に見えたりもするだろう。
しかもこういう変化はごく近いうちにやってくる。
社会と仕事、という意味では、弁護士/検察官/裁判官や会計士/税理士が失業する説がよく言われるが、たとえば、不動産鑑定士は一番儲かる公的な鑑定評価の仕事を近いうちに失うだろう。評価理論の知識、鑑定評価書の事例、全国の取引事例を集約すれば瞬時に仕事は終わる。
また、過去の学術的な発見が実は違ってました、的な話もたくさん出てきそう。歴史の解釈も変わるだろう。
活字データや紙媒体のAIへの統合でどのような未来が来るか、怖い面もあるが興味は尽きない。
広島の献花は歴史的なシーン
大量殺人は基本的に離れたところから行われ、実際に人々が苦しんだり死んだりするシーンやその実感と殺人者には距離があります。人が死ぬ決断をすることはあっても、実際に実感を持って殺すことは決してない立場の人々には、あの展示で一人ひとりの死や破壊の現場の様子と向き合うことの意義は大きい。
いろいろ言う人はいるけれど、歴史的なシーンだと思う。
追記
主要7カ国(G7)首脳らは5月20日、広島平和記念資料館(原爆資料館)を訪れた際に芳名録に記帳するとともに、メッセージを記載しました。核保有国を含む首脳らが原爆資料館を訪問し、展示を見学した上で書かれたメッセージであることが重要です。中身が十分かどうかというと、意見は分かれるかもしれません。少なくとも、私はどなたのメッセージも踏み込み不足と感じました。ただ、一方で歴史的な瞬間であるのは事実です。
もとより、メッセージは事前に各国の立場で練られたものであろうことは明らかですが…。
なお、外務省が発表した本文と訳文は下記の通りです。
岸田文雄首相(日本)
歴史に残るG7サミットの機会に議長として各国首脳と共に「核兵器のない世界」をめざすためにここに集う。
マクロン大統領(フランス)
感情と共感の念をもって広島で犠牲となった方々を追悼する責務に貢献し、平和のために行動することだけが、私たちに課せられた使命です。
Avec émotion et compassion, il nous appartient de contribuer au devoir de mémoire des victimes d'Hiroshima et d'agir en faveur de la paix, seul combat qui mérite d'être mené.
バイデン大統領(米国)
この資料館で語られる物語が、平和な未来を築くことへの私たち全員の義務を思い出させてくれますように。世界から核兵器を最終的に、そして、永久になくせる日に向けて、共に進んでいきましょう。信念を貫きましょう!
May the stories of this Museum remind us all of our obligations to build a future of peace. Together-let us continue to make progress toward the day when we can finally and forever rid the world of nuclear weapons. Keep the faith!
トルドー首相(カナダ)
多数の犠牲になった命、被爆者の声にならない悲嘆、広島と長崎の人々の計り知れない苦悩に、カナダは厳粛なる弔慰と敬意を表します。貴方(あなた)の体験は我々の心に永遠に刻まれることでしょう。
Canada pays solemn tribute to the many lives lost, the unspeakable grief of the Hibakusha, and the immense suffering of the people of Hiroshima and Nagasaki. Votre histoire restera à jamais gravée dans notre conscience collective.
ショルツ首相(ドイツ)
この場所は、想像を絶する苦しみを思い起こさせる。私たちは今日ここでパートナーたちとともに、この上なく強い決意で平和と自由を守っていくとの約束を新たにする。核の戦争は決して再び繰り返されてはならない。
Dieser Ort erinnert an unfassbares Leid. Heute erneuern wir hier gemeinsam mit unseren Partnern das Versprechen, Frieden und Freiheit mit aller Entschlossenheit zu schützen. Ein nuklearer Krieg darf nie wieder geführt werden.
メローニ首相(イタリア)
本日、少し立ち止まり、祈りを捧(ささ)げましょう。本日、闇が凌駕(りょうが)するものは何もないということを覚えておきましょう。本日、過去を思い起こして、希望に満ちた未来を共に描きましょう。
Oggi ci fermiamo e restiamo in preghiera. Oggi ricordiamo che l'oscurità non ha avuto la meglio. Oggi ricordiamo il passato per costruire, insieme, un futuro di speranza.
スナク首相(英国)
シェイクスピアは、「悲しみを言葉に出せ」と説いている。しかし、原爆の閃光(せんこう)に照らされ、言葉は通じない。広島と長崎の人々の恐怖と苦しみは、どんな言葉を用いても言い表すことができない。しかし、私たちが、心と魂を込めて言えることは、繰り返さないということだ。
Shakespeare tells us to "give sorrow words". Yet language fails in the light of the bomb's flash. No words can describe the horror and suffering of the people of Hiroshima and Nagasaki. But what we can say, with all our hearts, and all our souls, is no more.
ミシェルEU大統領
80年近く前、この地は大いなる悲劇に見舞われました。このことは、われわれG7が実際何を守ろうとしているのか、なぜそれを守りたいのか、改めて思い起こさせます。それは、平和と自由。なぜならば、それらは人類が最も渇望するものだからです。
An immense tragedy took place here almost 80 years ago. It reminds us what we -as G7- are defending. And why we are defending it. Peace and freedom. Because it's what all human beings want most.
フォンデアライエン欧州委員長
広島で起きたことは、今なお人類を苦しめています。これは戦争がもたらす重い代償と、平和を守り堅持するというわれわれの終わりなき義務をはっきりと思い起こさせるものです。
What happened in Hiroshima is still today haunting humanity. It is a stark reminder of the terrible cost of war - and our everlasting duty to protect and preserve peace.
(NHKのツイッター動画よりキャプチャー)